ある日の夕刻。 羊肉(ヤンロー)しゃぶしゃぶも少し飽きたので、新たな店を発掘しようと考え、校門を出た。 新規開拓は足でかせぐしかないため、ぶらぶらといつもの市場の方面へ足を向けた。 ぐるぐると廻っているうちに人だかりを発見した。 あまり野次馬的行為は好きではないのだが、50人ほどだろうか 人が集まっているので(このような場に出くわしたことがなかったこともあり)、 その輪の中に入ってみた。 輪の中心には30代くらいだろうか普通の身なりをしたおっさんが 一人右手に長刀らしきものを持って 「さぁ〜さぁ〜お立ち会い」と 何かしゃべっていた。 野次馬の取り巻き連中は静かに聞き入っていた。 途中、野次馬を笑かしたりと和気あいあいといった感じであった。 (ははぁ〜ん、これは物売りやな・・・)と思った私は 腹が減っていることもあり、その群から離れた。 市場の奥には 日本でいう団地のような建物があちこちと点在していた。 団地の1階には雑貨店など店を開いているところもあったが、 どんどん先に進むと、それこそ団地ばかりで、 (この先、店はないだろう〜)という雰囲気であったので きびすを返した。 さっきいた野次馬連中はまだいた。 (まだ、やってるな〜 何か販売してるのかな)と思い立ち止まった。 相変わらず何か話をしているのだが そのおっさんが 左手にメンソレータムというかタイガーバームというか そのたぐいの薬を塗りたくったかと思うと、おもむろに 右手に持っていた長刀を左手のひら(かもしくは左手首、どっちか忘れました)にあてた。 そしてそのまま そのおっさんはグイッと刺した。 ポタポタと血が流れた。したたり落ちていた。 明らかに串刺し状態であった。 歓声、悲鳴が一斉にあがった。 私はといえば (何や このおっさん 何しよんねん)であった。 タイガーバームっぽい薬が効いているのか 思ったより血が出なかったので (そんなもんかいな〜)と感心した。 一瞬野次馬の取り巻きは そのおっさんに向かって何か発していたが 私にはそれが何を言っているのか分からなかった。 が、その後の展開が面白かった。 大道芸のおっさんは 刀を抜き取り血を拭いた後、ざるを片手に「金をくれ(見物料)」ポーズをとった。 面白かったのは あれほどたくさん居た取り巻き連中は誰一人として 金など支払わず、あ〜だ、こ〜だとイチャモンをつけながら アッという間に立ち去ってしまった。あんなにたくさん居たのに・・・。 その間(ま)というか、立ち居振る舞いに舌を巻いた。 一人若い男性が失神していたのが印象に残った。 血を見てびっくりしてしまったのだろうか。 私は何食わぬ顔で、その場を立ち去ったが 内心(すごい大道芸やったなぁ〜)とひとり感心し、悦に入った。 ・・・でも芸と言えるのだろうか? 結局その日はカップラーメンを買って晩飯とした。 その日以降、 また(大道芸)やってないかな?と期待し、 チェックして歩いていたが 二度とお目にかかることはなく貴重な体験であった。 |
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