明洞の金さん
私と弟のふたりで旅行したときのことです。
ロッテホテルに到着し、一息ついた後
夕食ということで焼き肉を食べに近くの明洞へ足を運びました。
ガイドブックに書いてあった長寿カルビ店で
食事をとった後、時間もあることから
ほろ酔い気分であたりをぶらぶらと散策することにしました。
通りは人でいっぱい、
活気にあふれています。
ちょうど書店があったので、そこへ入り
私は辞書を買おうと思い、どれにしようかと読みふけっていると
弟が小用をもよおし、私をせかす。
それなら「店員に英語で聞いてみ」と言ったところ
店員は「ない」との返事。
「おまえ、ホンマに英語で言うたんかぁ〜?!」
「言うた!ちゃんと言うたでぇ〜」
「英語通じてないんとちゃうん?ちゃんと(英語らしく)喋ったんか?」とツッコミを入れたが
「も〜う〜アカン、我慢でけへん。もう〜出る」ということなので
仕方なく外へでて
ありそうなところ(大きいビル、百貨店、公共らしい建物)を探すも
見あたらない。
「はよっ はよぉ〜」とせかす。
ちょうど近くに路地があったので
立ちションはいけないが、漏らすといけないので
「そこでやってこい」と私。
するのかな〜と思って待っていると
戻って来るや
弟:「できひん」
私:「なんでや?」
弟:「こわいねん・・・・」
私:「●☆◇▼・・?・・・」
夜はすっかり更けていて
通りはネオンや人で騒がしいものの
その路地は反対にネオンもなく、まっ暗で人もいない。
まぁ気持ち悪いと言えば、気持ち悪い・・・。
私:「そばに居るから、大丈夫や 行ってこい!」
弟:「アカンねん・・・」
私:「・・・・」
ということで、立ちションをあきらめ(立ちションはよくないし)
我々は便所を探すことにした。
確か近くに交番があったので、そこで聞いてみようと思い
たばこに火をつけながら、
英語で何て言ったらいいのかなと
頭の中で英作文しながら
足早に進んでいるときに彼がやってきた。
スーツ姿に身を固めた彼は流暢な日本語で
私にすり寄り、こう言った。
「すみません、火を貸してください」
これがそもそもの始まりであった。
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