金さんの親切
「火を貸してください」
いいですよと私が火を貸すと
私の前方で弟がぴょんぴょんとんでいる。
「う〜っ しょんべん しょんべん」と連呼している。
先ほどのカルビ店でしこたまビールを飲んだのだろうか・・・。
火を貸して
それでハイ サイナラかと思っていたら
彼から話を切りだしてきた。
私の名前は金といいます。
早稲田大学で留学をしていました。日本語を話すのは久しぶりです。
もしよかったらお話ししませんか・・・と言った具合。
終始笑顔を絶やさず、日本のこと、留学したときの思い出を語る。
話もさることながら、こちらは便所を探している最中なので
「この近くに便所はないですか?」と尋ねると
地下鉄の入り口にあるとのこと。
弟は喜び勇んで「はよっ 行こっ 行こっ!」の連発。
すぐさま3人で直行した。
弟が一番でトイレに走ると
そのさまを見て
金さん:「う〜ん 私もしたくなりました」
私:「じゃ 私も」
三人で連れションを終え
トイレの出口で金さんがお金を支払い、再び明洞へ向かった。
色々と話をするうちに
外は寒いし、どこかで休みませんか?と金さんから・・・。
こちらも便所の件でお世話になっているし
軽く一杯でもおごらなきゃ申し訳ないなと思っていたので
了解した。
するとどこで飲みましょうかということになった。
金さん:「新村がいいですか?明洞がいいですか?」
タクシーに乗ると帰りに困るだろうし
飯は食ったばかりで軽く一杯のつもりだったので
明洞でと答えると
金さん:「近くに知っている店があるのでそこへ行きましょう」
ということになった。
今にして思えば
相手(金さん)のやり方として強引な方法はとっていない。
何かを決めるときはこちらに確認をとったりして、
あくまでもこちらの判断で選んだということである。
実際問題、私ボッタクリですと言ってやる人はいないわけで、
そのへん、この金さんのファーストコンタクトとアプローチは
さりげなく、口調は丁寧で、へりくだっている姿勢など
きわめて巧みである。(←感心している場合か!)
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